工作 黒金星と呼ばれた男

久しぶりのシネマート新宿。
大きめのシアターで上映ですが、
けっこう混んでいました。
3連休だったのもありますが、
まだまだ話題の映画なんだと思います。
浮ついたところのない、
真摯なスパイ映画。
でもめちゃめちゃ面白いんです。

無題


主要キャストに、
韓国を代表する演技派俳優、
ファン・ジョンミン、
イ・ソンミン、
チョ・ジヌン、
加えてチュ・ジフンまで。
でもって大好きな南北スパイもの、
遠出してでも観たかった作品です。

1990年代初頭からのお話、
さほど遠い時代ではないのに
こんなアナログな諜報活動。
隣国の近代史を知るたびに、
不思議な感覚に陥ります。

自国韓国の安全企画部から命を受け、
一般事業家に成りすまし、
北朝鮮の核施設の様子を探るスパイ、
コードネームは黒金星(ブラックヴィーナス)。
韓国諜報史上、最も有名な工作員の物語。

なんと言っても彼は、
時の最高指導者、金正日との面会まで成し遂げ、骨董品売買の仕事まで委託されたのだから、その手腕は半端ありません。

北の軍部上官に疑われ、自白剤まで打たれながらも任務を遂行します。
手に汗握る心理戦は無論ハラハラドキドキなのですが、何と言っても身を乗り出してしまったのは、オールセットだという平壌市内のロケーションと、あの金正日との接見シーン。

目を合わせてはいけない、ボタンの位置を見よ、話を遮ることは許されない、などなどの制約。
愛犬のマルチーズと一緒に現れる天下の金総書記。
その一挙手一投足に緊迫する周囲。
私も画面に釘付けでした。
撮影のスケール、完成度も素晴らしく、豪華だけれど無味乾燥な整然たる市内と、
死体が積まれ、垢にまみれたうつろな目の人々がたむろする郊外の路傍との格差も圧巻。

その中でしっかり描かれる、黒金星と北の外貨調達係リ所長を核とした人間ドラマ。
演じるのは、役への成り切り度お墨付きのファン・ジョンミンとイ・ソンミン。
二人が段階的に近づいていく様子がこちらにも違和感なく伝わってきます。
軍服姿の小賢しい表情もこれまた魅力的なチュ・ジフンが要所でスパイス的な存在感。
三人並んだ絵面がたまりません。

さらに物語は驚きの展開を見せます。
いよいよ北の懐に潜り込み、これからという時、自国大統領選挙の金大中当選を阻みたい安全企画部の「北風作戦」。
あれよあれよという間に変わる状況は、観ているほうも唖然。
誰が敵で誰が味方なのか、韓国の未来はどうなるのか、クライマックスに向けてぐいぐい引っ張られます。
ラストの演出もうまいことこの上なし。
ああいうシーンで盛り上げて、そこでそれを見せる?
どっちに転んでも泣ける仕組みです。
素晴らしい。

実話ベース、黒金星ご本人も観賞され、「ほぼ忠実に描かれていた」とおっしゃったそうです。
それが本当なら、こんな衝撃的なお話をとてもわかりやすくコンパクトにドラマティックに見せてもらえる、これぞ映画の醍醐味です。
観賞後、金大中、北風作戦で検索しまくったことは言うまでもありません。

知らなかった歴史を完成度の高いプロダクツによりインプットできる喜び、名優達の競演、緊張と緩和による高揚、様々味わえる上質な作品です。

でもって私はやっぱりイ・ソンミンが大好きです!
まだ彼の出演する「ミセン」「記憶」などの韓国ドラマをご覧になっていない方、ぜひ!
映画ではソン・ガンホの「弁護人」にも出てました。

私の満足度 90点
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「沈黙、愛」 韓国映画、2018年、チョン・ジウ監督


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WOWOWの韓国サスペンス特集で録画、観ました。
面白かった!
チェ・ミンシク様、大好きなのでかなり点数甘くなりますが、仕方ない。
やっぱり名優、というかそこにいるだけでがっつり持ってかれますよね~。
存在感が凄すぎ。
殺人鬼、悪魔のイメージかなり強いミンシク様、
今回は、親分感はあるけれど紳士な役どころ。
めっちゃ大富豪なブローカー社長です。
きれいでセクスィな婚約者にメロメロ、娘に紹介するミンシクお父さん、
クルーザー乗って漢江デート、彼女にハイブランドウォッチをプレゼント。
喜ぶ彼女を見つめ、優しくエスコートするミンシクさん。
そう、ミンシクさんの持つ男の色気がぶわ~~~っと放出されてるんです。
どんな役の時も見え隠れするエエ男の色気は隠せませんが、
ストレートにかっこいいじゃんね、今回。
いや~、もうこれだけで観た甲斐ありました。
そんな婚約者が殺され、娘が逮捕されちゃう。
哀しみの中、娘を救うために奔走する金持ち父さん。
韓流ドラマの申し子、パク・シネちゃん演じるさわやか弁護士に
娘の弁護を依頼しつつ、独自で事件を嗅ぎまわります。
そして真相を語る証拠が法廷に。
その後の大どんでん返し・・・
う~む、そう来るか。
衝撃というほどでもないけど、そうとは思ってなかったので、
なかなかの心持で着地できました。
運転手役の俳優さん、初めて観たけど、
最後にとても重要な役割担いつつ、いい味出していて心に残りました。
ミンシク様の男気、愛、最後の最後まで感じとることが出来て大満足!
愛すべき作品です。
もう一回じっくり観たいなあ。

わたしの好き度 80点

バーニング 劇場版

今年に入って観た映画は数本、
いろいろ諸事情ありますが、どうしても観たい映画も少なく。
そんな中でも繰り合わせて観に行ったこの作品は素晴らしかった。

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昨年にNHK版を観てからの鑑賞。
劇場版には、主人公を理解する上で大事なシークエンスがいくつも追加されていました。
イ・チャンドン監督はいつも私の泣きのツボをトーンと突いてきます。
ソウルの街や国境近くの小さな村、はためくビニールハウス、夕焼け、
寂寥感に満ちた画面と、謎が散りばめられた物語。
広がるその世界は何もかもが私には魅力的でした、
証拠のない失踪事件や存在不明の猫や井戸までも。
何か靄のかかった遠くの世界に誘われているような感覚。
しかし、何よりも強く惹き付けられたのは、
ユ・アイン演じる主人公ジョンスの、
おそらく自分でも明確には認知していないに違いない、
けれど確実な渇望。
何も持たないジョンスの前に突然現れたヘミとベン、
二人の存在は彼を高揚させると同時に、
置かれた現実をはっきりと浮き彫りにします。
加えて幼い頃家を出た母との再会。
全てを持っているベンに貧しい自分の暮らしを見せてしまうこと、
ベンの友達と飲み、自分を捨てた母に会うこと、
彼は拒まむこともせず普段と同じテンションを保ちます。
穏やかな笑みさえ浮かべるその心の奥底に嫉妬や絶望が微塵もないわけがなく、
拒まないことが彼なりのプライドだったのではないかと思うと、
小説を書くという夢や村長に頼まれた文筆の仕事までが切なく見えてくるのです。
結局劇場版でも、へミの真実やベンの正体、ジョンスの行く末、全てはっきりとせず、
ベンのバスルームのコレクションや名前を呼ばれて反応する猫などから、
想像をめぐらせるしかないのですが、そんなことはどうでもよくなるほど、
私はジョンスという青年に心を寄せてしまったのでした。
ラストの彼の行動は必然でもあり、予見出来ていたもの。
今の彼が解き放たれるにはこうするしかなかった。
それでも、へミやベンに会わなかったら彼はどう生きていたのか、
事件の後どうなってしまったのか。
私はジョンスのことを今でも考えるのです。
イ・チャンドン作品の主人公に出会ったとき、
いつも私は彼らのことを引きずってしまいます。
「オアシス」の二人も、「ペパーミントキャンディ」のヨンホも、
「冬の小鳥」のジニも。
そんな気持ちにさせてもらえることが癖になり、
私はこの監督の作品を観ずにはいられません。

ベンを演じたスティーヴン・ユアン、「ウォーキング・デッド」のグレン以来、
別の役を演じる彼を観たのは初めてですが、
とらえどころなく不穏なベンのキャラクターを見事に演じていたように思えます。
彼はとても好きな役者です。
韓国の誇る若き名優、ジョンスことユ・アインはもちろんのことです。

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ジル

Author:ジル
ジルです。
8年前から続けていた日記を引越し。
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映画や舞台やドラマを観ることが
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