工作 黒金星と呼ばれた男

久しぶりのシネマート新宿。
大きめのシアターで上映ですが、
けっこう混んでいました。
3連休だったのもありますが、
まだまだ話題の映画なんだと思います。
浮ついたところのない、
真摯なスパイ映画。
でもめちゃめちゃ面白いんです。

無題


主要キャストに、
韓国を代表する演技派俳優、
ファン・ジョンミン、
イ・ソンミン、
チョ・ジヌン、
加えてチュ・ジフンまで。
でもって大好きな南北スパイもの、
遠出してでも観たかった作品です。

1990年代初頭からのお話、
さほど遠い時代ではないのに
こんなアナログな諜報活動。
隣国の近代史を知るたびに、
不思議な感覚に陥ります。

自国韓国の安全企画部から命を受け、
一般事業家に成りすまし、
北朝鮮の核施設の様子を探るスパイ、
コードネームは黒金星(ブラックヴィーナス)。
韓国諜報史上、最も有名な工作員の物語。

なんと言っても彼は、
時の最高指導者、金正日との面会まで成し遂げ、骨董品売買の仕事まで委託されたのだから、その手腕は半端ありません。

北の軍部上官に疑われ、自白剤まで打たれながらも任務を遂行します。
手に汗握る心理戦は無論ハラハラドキドキなのですが、何と言っても身を乗り出してしまったのは、オールセットだという平壌市内のロケーションと、あの金正日との接見シーン。

目を合わせてはいけない、ボタンの位置を見よ、話を遮ることは許されない、などなどの制約。
愛犬のマルチーズと一緒に現れる天下の金総書記。
その一挙手一投足に緊迫する周囲。
私も画面に釘付けでした。
撮影のスケール、完成度も素晴らしく、豪華だけれど無味乾燥な整然たる市内と、
死体が積まれ、垢にまみれたうつろな目の人々がたむろする郊外の路傍との格差も圧巻。

その中でしっかり描かれる、黒金星と北の外貨調達係リ所長を核とした人間ドラマ。
演じるのは、役への成り切り度お墨付きのファン・ジョンミンとイ・ソンミン。
二人が段階的に近づいていく様子がこちらにも違和感なく伝わってきます。
軍服姿の小賢しい表情もこれまた魅力的なチュ・ジフンが要所でスパイス的な存在感。
三人並んだ絵面がたまりません。

さらに物語は驚きの展開を見せます。
いよいよ北の懐に潜り込み、これからという時、自国大統領選挙の金大中当選を阻みたい安全企画部の「北風作戦」。
あれよあれよという間に変わる状況は、観ているほうも唖然。
誰が敵で誰が味方なのか、韓国の未来はどうなるのか、クライマックスに向けてぐいぐい引っ張られます。
ラストの演出もうまいことこの上なし。
ああいうシーンで盛り上げて、そこでそれを見せる?
どっちに転んでも泣ける仕組みです。
素晴らしい。

実話ベース、黒金星ご本人も観賞され、「ほぼ忠実に描かれていた」とおっしゃったそうです。
それが本当なら、こんな衝撃的なお話をとてもわかりやすくコンパクトにドラマティックに見せてもらえる、これぞ映画の醍醐味です。
観賞後、金大中、北風作戦で検索しまくったことは言うまでもありません。

知らなかった歴史を完成度の高いプロダクツによりインプットできる喜び、名優達の競演、緊張と緩和による高揚、様々味わえる上質な作品です。

でもって私はやっぱりイ・ソンミンが大好きです!
まだ彼の出演する「ミセン」「記憶」などの韓国ドラマをご覧になっていない方、ぜひ!
映画ではソン・ガンホの「弁護人」にも出てました。

私の満足度 90点
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The Witch 魔女

The Witch 魔女」韓国、2018年、パク・フンジョン監督

こちらもWOWOWの韓国サスペンス特集を録画したもの。
公開当時もとても気になってましたが、観に行けなかったので、
割と早く放送してくれて嬉しい!

サスペンスだけじゃなくアクションも秀逸。
人工的に造られた"ギフテッド"達のお話で、
もちろん荒唐無稽ではありますが、面白かった!
こういうストーリー大好きです。
何とな~く感づいていたものの、
真実が明らかになり、今までのことが腑に落ちる瞬間はカタルシス。
そうだよね~、この子ってそうだもんね~、と膝ポン。
「XMEN」「LUCY」「KILL BILL」「Heroes」...
既視感ありますが、好きな展開なので全然OK。
嵐の前の静けさ、ヒロイン・ジャユンの日常が描かれ、
それが牧歌的であればあるほど、
その後にわかる周到な計画が際立つのです。
わかってみれば、ジャユンがあの家にいる意味、
親友がなぜあの娘だったのか、
あのシーンの育ての父の表情の真意、
ふえ~、そういうことか。

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ヒロインの周囲の何も知らない善良な人々、
この人達、殺されちゃう!
今かな?ドキドキ、あれ大丈夫…みたいのが続いて、
意外と死者も少なく、
ホッとする場面が多いのも恐がりにはちょうどよい感じ。
なんでジャユンは今まで見つからなかったのか、
コ院長一家惨殺事件、
パク・ヒスン演じるミスター・チェなる刺客とか、
ギフテッドを造った「本社」の真実等々、
突っこみどころ、説明不足も多々あり、
消化不良ではありますが、
Part.1だからか、と納得させます。
とにかくキャストの素晴らしさを語らずにはいられません。
ヒロイン ジャユンを演じたキム・ダミちゃん、
韓国にはまだこんな逸材がいたのね・・・
表情なんて、この映画の意図をすっかりわかってる。
歌上手すぎ。
前半と後半の演じ分け、
特に後半の、覚醒後の彼女は既に完成された女優でしかないです。
オーディションで選ばれたなんて思えない。
貴公子ことチェ・ウシクの美貌と演技のバランスも忘れられない。
このルックスでこれだけやれる人材を抱える韓国映画界の未来は明る過ぎます。
そして、チョ・ミンス演じる大御所マダムは、
オリジナルなただならないヒール感がたまりません。
パク・ヒスンもいつも以上にクールでしたし、
目に見える要素と、第一段階の謎解きの満足感はクリアでしたので、
本当にPart.2が待ち遠しい。


私の満足度 85点

「沈黙、愛」 韓国映画、2018年、チョン・ジウ監督


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WOWOWの韓国サスペンス特集で録画、観ました。
面白かった!
チェ・ミンシク様、大好きなのでかなり点数甘くなりますが、仕方ない。
やっぱり名優、というかそこにいるだけでがっつり持ってかれますよね~。
存在感が凄すぎ。
殺人鬼、悪魔のイメージかなり強いミンシク様、
今回は、親分感はあるけれど紳士な役どころ。
めっちゃ大富豪なブローカー社長です。
きれいでセクスィな婚約者にメロメロ、娘に紹介するミンシクお父さん、
クルーザー乗って漢江デート、彼女にハイブランドウォッチをプレゼント。
喜ぶ彼女を見つめ、優しくエスコートするミンシクさん。
そう、ミンシクさんの持つ男の色気がぶわ~~~っと放出されてるんです。
どんな役の時も見え隠れするエエ男の色気は隠せませんが、
ストレートにかっこいいじゃんね、今回。
いや~、もうこれだけで観た甲斐ありました。
そんな婚約者が殺され、娘が逮捕されちゃう。
哀しみの中、娘を救うために奔走する金持ち父さん。
韓流ドラマの申し子、パク・シネちゃん演じるさわやか弁護士に
娘の弁護を依頼しつつ、独自で事件を嗅ぎまわります。
そして真相を語る証拠が法廷に。
その後の大どんでん返し・・・
う~む、そう来るか。
衝撃というほどでもないけど、そうとは思ってなかったので、
なかなかの心持で着地できました。
運転手役の俳優さん、初めて観たけど、
最後にとても重要な役割担いつつ、いい味出していて心に残りました。
ミンシク様の男気、愛、最後の最後まで感じとることが出来て大満足!
愛すべき作品です。
もう一回じっくり観たいなあ。

わたしの好き度 80点

バーニング 劇場版

今年に入って観た映画は数本、
いろいろ諸事情ありますが、どうしても観たい映画も少なく。
そんな中でも繰り合わせて観に行ったこの作品は素晴らしかった。

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昨年にNHK版を観てからの鑑賞。
劇場版には、主人公を理解する上で大事なシークエンスがいくつも追加されていました。
イ・チャンドン監督はいつも私の泣きのツボをトーンと突いてきます。
ソウルの街や国境近くの小さな村、はためくビニールハウス、夕焼け、
寂寥感に満ちた画面と、謎が散りばめられた物語。
広がるその世界は何もかもが私には魅力的でした、
証拠のない失踪事件や存在不明の猫や井戸までも。
何か靄のかかった遠くの世界に誘われているような感覚。
しかし、何よりも強く惹き付けられたのは、
ユ・アイン演じる主人公ジョンスの、
おそらく自分でも明確には認知していないに違いない、
けれど確実な渇望。
何も持たないジョンスの前に突然現れたヘミとベン、
二人の存在は彼を高揚させると同時に、
置かれた現実をはっきりと浮き彫りにします。
加えて幼い頃家を出た母との再会。
全てを持っているベンに貧しい自分の暮らしを見せてしまうこと、
ベンの友達と飲み、自分を捨てた母に会うこと、
彼は拒まむこともせず普段と同じテンションを保ちます。
穏やかな笑みさえ浮かべるその心の奥底に嫉妬や絶望が微塵もないわけがなく、
拒まないことが彼なりのプライドだったのではないかと思うと、
小説を書くという夢や村長に頼まれた文筆の仕事までが切なく見えてくるのです。
結局劇場版でも、へミの真実やベンの正体、ジョンスの行く末、全てはっきりとせず、
ベンのバスルームのコレクションや名前を呼ばれて反応する猫などから、
想像をめぐらせるしかないのですが、そんなことはどうでもよくなるほど、
私はジョンスという青年に心を寄せてしまったのでした。
ラストの彼の行動は必然でもあり、予見出来ていたもの。
今の彼が解き放たれるにはこうするしかなかった。
それでも、へミやベンに会わなかったら彼はどう生きていたのか、
事件の後どうなってしまったのか。
私はジョンスのことを今でも考えるのです。
イ・チャンドン作品の主人公に出会ったとき、
いつも私は彼らのことを引きずってしまいます。
「オアシス」の二人も、「ペパーミントキャンディ」のヨンホも、
「冬の小鳥」のジニも。
そんな気持ちにさせてもらえることが癖になり、
私はこの監督の作品を観ずにはいられません。

ベンを演じたスティーヴン・ユアン、「ウォーキング・デッド」のグレン以来、
別の役を演じる彼を観たのは初めてですが、
とらえどころなく不穏なベンのキャラクターを見事に演じていたように思えます。
彼はとても好きな役者です。
韓国の誇る若き名優、ジョンスことユ・アインはもちろんのことです。

大草原の小さな家 NHK BS プレミアム

  • 2019/06/09 21:10
  • Category: TV
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嬉しいなったら嬉しいな!

「大草原の小さな家」がBSプレミアムで再放送!

めちゃめちゃ映像が美しくなって、おまけに全編新吹き替え~。

DVD持ってます、シーズン1だけだけど。笑

それよりも画像キレイです。

4K用にブラッシュアップされたからか?

DVDにはない本当の第1話から始まります・・・

DVDは「すばらしい収穫」からの収録ですから、

ウォルナットグローブに着いてからなんですよね。

そして、新吹き替えなんてめちゃめちゃ新鮮な「大草原」。

もちろん、オリジナルの吹き替え、大好き。

原点ですから。

でもでも、新しい吹き替え陣も素晴らしい~。

特に、父さん役の森川智之さん、柴田光彦さんによく似た深いテナーな声、

完璧にマイケル・ランドンさんでしかないよ、ブラボー。

本当に美しい映像で、おそらくノーカット、

何度みてもあきないストーリー、ロケーション、キャスト。

エドワーズさんのクリスマスプレゼントのくだりにまた泣いた。

次回はいよいよ@ウォルナット・グローブや~。


大草原ファンのみなさま、またあの頃に戻ってローラとメアリーとネリーと、

一緒に青春をたどりましょう!

3月から4月に観た映画

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すっかり記録をさぼっていましたが、
忘れないようにちょっとだけ感想。

「スリー・ビルボード」
まごうことなき傑作。
ここ数年でも一番の完成度、残念に思える部分がなかった。
様々な人物とモチーフが今でもよみがえる。
表裏一体、人は変われる。

「ビガイルド」

クリント・イーストウッド版とはだいぶ違って、美しくて健気で残酷。
退屈なシーンも多々あれど、霞みがかった絵画のような情景と女だけの寄宿舎にはやはり心惹かれました。

「15時17分、パリ行き」

なんでこの手法?と、非難の声も聞こえて来ますが、私は楽しめたな。
男の子達の成長の過程と、事件絡む必然性に納得。
旅のシークエンスは確かに長いけど、それ故にサスペンスの部分が際立って感じられました。

「シェイプ・オブ・ウォーター」

ファンタジーとリアルの見事な融合、どのキャストもその世界にマッチしていたけれど、やはりサリー・ホプキンス演じるヒロインの存在が切なくて、心を寄せずにはいられなかった。
美しくてシュールに彩られた、彼女のコージーな部屋と日々の営みは愛おしくて、忘れられない。
名作。

「去年の冬、きみと別れ」

大好きなサプライズ系サスペンスであることは間違いないし、プロットは悪くないのに、全般的なキャストの薄さでその波に乗れず。
残念、せめてあの役とあの役、他におらんかったんかなあ。

「トレイン・ミッション」

リーアム・ニーソン、お約束の元プロフェッショナルもの。
電車という密室、謎の女からの指示、抜き差しならない状況、タイムリミット、成り行きがわかっていても面白い。
安定です。

「レッド・スパロー」

ジェニファー・ローレンス、体を張ったエロティック・サスペンス。
こういう体当たりなとこが大好きなんです、ジェニファー。
何気に豪華な脇のキャストも素敵。
スパロー養成所のとんでも設定、なんとも怪作でした!好きです。

「バーフバリ 王の凱旋」

古代インドの英雄、三代に渡る王バーフバリの伝説を巨費を投じて映画化。
その後編ですが、前編観てなくても問題なくお話把握できました。
最新CGを駆使してるのにどこか懐しさ残る映像、大河なストーリーと魅惑のファンタジー、外連味溢れるキャスト。
面白いにもほどがあります。
最終的には全然タイプじゃないバーフバリに恋してました。
曇りのない正義と優しさ、半端ないオーラを持つバーフバリは全人類待望の指導者。
荒唐無稽なアクションも見どころ。
インドならではのマテリアル扱い、スケールでか過ぎる嫁姑案件も含め、刮目の娯楽大作です。
機会があればぜひっ!


「ラスト・ワルツ」

1978年、マーティン・スコセッシが演出・監督したザ・バンドの解散ライブドキュメント作品。
大音響リマスター版のリバイバル上映を観た。
テレビでしか観たことがなくうろ覚えなままでいたので、今回しっかり細部まで咀嚼できて嬉しい。
クラプトン、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェル、ニール・ヤング、マディ・ウォーターズなど歴史的なミュージシャンが入れ替り立ち替り、それぞれの個性とグルーヴがあまりに強烈で、恐ろしいまでに見どころ満載なんだけど、ザ・バンドのフロントマンであるロビー・ロバートソンのかっこよさ、私的にはこれに尽きるんだ。
美貌、俳優といわれてもおかしくないカリスマ、ちょうどいいステージでの熱量、全編出ずっぱりでも全然飽きない。
めっちゃ素敵です。
様々なライブ映像では、観客の高揚が映し出されることで、その場のエモーションを共有することができたりするんだけど、この映画ではそのカットがほぼない。
ステージで繰り広げられるパフォーマンスのみで感情が揺さぶられる。
スコセッシ様がロビーのために撮った、本当の記録映画なんだな。



「グレイテスト・ショーマン」「エターナル」




2月に観た映画 残りパート②

「グレイテスト・ショーマン」

ミュージカル映画は大好きなので、常に期待を持って、受け入れ体制万全で望みます。
ほとんどがストーリー大味で違和感満載だし、史実の美化なんて当たり前、ファンはそんなのは承知の上でその世界に浸るわけですけれど、私の場合何度もリピートする作品の決め手はやっぱり楽曲なんです。
多少お話が破綻してても、暗くても、逆に能天気でも、チープでも、人がたくさん死んでも、琴線に触れる何度でも聴きたい曲が存在すれば可能な限り観てしまいます。
この大人気作品、敬愛するヒューたま主演のオリジナルミュージカルということで、期待値上げすぎたのもあるんですけど、自分好みの曲が残念なことになかったのです。
ヒューの決めポーズから入るオープニングでワクワクして、これはいける!と、その後の幼少期のエピソードも、王道ね!と掴みはOKだったのですが、その後続かなかった。
This is meのキアラ・セトルの熱唱はエキサイティングだったし(特にアカデミー賞でのアクトは圧巻でした)、居場所を見つけたサーカスの仲間たちの喜びには胸が熱くなりました。
バーカウンターや空中ブランコの超絶パフォーマンスも、ゼンデイヤの完璧なプロポーションにもクラクラ、歌姫レベッカ嬢の凛としたステージも素敵だったのですが、ストレート過ぎるメロディラインはどれも残らず。
もっとサーカスの皆の個別のパフォーマンスも観たかった。
細かいことは気にしないと言いつつも、最終的には私自身もバーナムの成功後の行動には反旗を翻してしまいました。
歌姫も勘違いするし、家族は泣くよ、でもってサーカスの皆はどないするねん、と。
個人的には乗り切れなかったのですが、素晴らしいミュージカル作品であることは間違いないと思います。
苦手だった「ミス・サイゴン」も、何度か劇場に通う内にホリックになってしまったという前歴があるので、ある日突然好きになる可能性は大です。
そうなったら嬉しい。

「エターナル」

ビョンホン・ファンの友達に誘われて、「映画史上に残る衝撃のラスト」なるキャッチコピーに不穏なものを感じながらの鑑賞。
勤務する証券会社の破綻の責任を取り辞職、うちひしがれ酒に溺れるビョンホン演じるジェフン。
シドニーで暮らす妻と息子を訪ねますが、彼女と隣家に住む男性との間に親密さを感じた彼は、しばらく離れて様子を見守ることに。
予告の段階で、もしやこれって?と予想しておりましたが、的中でした。
おそらく大多数の観客が途中でそのプロットには気がつくことでしょう。
あの映画やあの映画が思い起こされ、気抜けしてしまうかもしれません。
ですがそうなると、その角度からの鑑賞がなかなか面白い。
様々な伏線、彼の佇まいや行動、町で知り合った韓国女性、犬、とオチを裏付けながら観ていくのです。
わかってしまった落胆よりも、家族のなり行きが気になる上に、丁寧な描写と静謐な画面がとても染みてくる。
名作「イルマーレ」に通じる、私の好きな美しい韓国映画のジャンルでした。
「衝撃」では全然なかったのですが、なかなかに切ない愁いのあるラスト、ビョンホンの抑えた演技も含め、好きな作品となりました。
「Single Rider」という原題もいいな。

「羊の木」「犬猿」




イーストウッドにまたもやられたインフルエンザ明けの夜。
「15時17分 パリ行き」素晴らしかったです!
まるで我が子の成長を見守るかのようにスクリーンに釘付けに。
よそんちの子たちなのに。

2月に観た映画 残り パート①

「羊の木」

同名人気コミックを、映画化にあたって大幅に改変、ほぼ別物に。
政府の極秘プロジェクトにより、過疎に悩む地方の港町に移住してきたのは6人の元受刑者たち、しかも全員殺人犯。
市役所職員月末(つきすえ)は、上司命令で彼らの受入れ担当者となる。
原作読んでいますが、この施策をなぜこの市が受け入れることになったのか、というくだりは映画版ではばっさり割愛され、雑な入り。
月末もしかり、元受刑者杉山も宮腰も年齢や犯罪歴やキャラクターまで変わってます。
錦戸月末の爽やかで実直な佇まいも含め、この背景を以てしても青春が薫る、この監督の持ち味がふんだんに発揮されていました、良くも悪くも。
原作受刑者たちの、滑稽なまでの薄気味悪さや数々の残酷描写は影を潜めていますが、音の使い方や、キャストの上手さで不穏な空気感はそこそこあり、のろろ祭が終わるくらいまでは面白く観られていたように思います。
その後の宮腰を巡るサスペンスが、有りがちな上にラストまで雑になってしまい、残念。
のろろ様を軸に、物語を寓話的に昇華させて違和感なかった原作とは、やはり出来が違うのでした。
過疎の町での受刑者の更正というプロットは興味深いだけに、もう少し違うアプローチが出来なかったのかなあと思うのです。

「犬猿」

きょうだいの確執を扱った映画は多々ありますが、ここまで姉妹兄弟関係のみにスポットを当てたお話はあったかな。
その世界の狭さがとても新鮮。
自分より格段に可愛くて人気者の妹を嫉む姉、粗暴で刑務所帰りの兄を疎む弟、ところが相手はさほど意識しておらず、相変わらず自分に依存してくる。
あっという間にそんな彼らの人となりと関係が描き出され、どんどん悪化する状況。
こんなだったら嫌だなあ、とは思うのですが、設定が極端な上に、浅い内面描写なので誰にも感情移入はできないし、修羅場の規模もさほどではなく。
もうちょっともうちょっと何かが加わると凄く面白くなるのにな、と思いつつ、何気ない台詞にどきっとすることもあったり、見て見ぬふりで我関せずの昭和の親たちにも笑えました。
相変わらず新井浩文が恐くて滑稽で上手いし、窪田くんは普通な役こそ凄味があります。
姉妹二人、素人っぽさは多少残りましたが好演で、ニッチェ江上はたぶんこれからもオファーすごいんじゃないかな。
何より、オープニングのワンシークエンスがなかなか面白かった、そこだけもう一回観たい。

「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」




全米で数館上映から大ヒットで拡大。
アカデミー賞脚本賞候補にまで上り詰めた話題作です。
早々に観ました。
実話を映画化、主人公はご本人。
いろんな角度から、大好きです。
こんな異文化恋愛のパターンもあるんだ。
マジョリティからの差別による拒否ではなく、
マイノリティの信念というより世界観による謝絶。
一般日本人には新鮮な事実。
とてもかわいそうな展開なのですが、
彼女が大病に罹患してからの流れが素晴らしくリアルなのに、
なぜか希望の持てる家族&主人公の行動と繋がりで、
みずみずしい空気感。
同様にキャストもフレッシュで既視感がない。
唯一大御所はホリー・ハンター、
とはいえいつも違う表情を見せてくれる彼女なので、
存在が嬉しい。
濃い外連味溢れる映画ももちろん大好きですが、
こんなかわいい胸のすくようなラブストーリーが、たまには観たいのです。

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齋藤工監督作品。
シネフィルとしてのこだわり、人柄、人脈、ユーモア、彼のワールドが見えました。
最近、展開はどうあれ「丁寧な」映画に惹かれてしまう傾向にあるのですが、この作品にもそれを感じました。
実話を基にしているというある家族のお話。
冒頭の葬儀受付のくだりが、松岡茉優ちゃんの佇まいも含め、既によかった。
妙に笑えましたが、あれも実話なんだろうか、気になります。
借金と煙草を置いて姿をくらました父との13年ぶりの再会、残された家族の辛いエピソード、よくある話と思って観ていると、タイトルバック挿入後の後半、あんなにコンパクトな中で、様々撹拌されるとは思ってなかったので新鮮で、冒頭の掴みの部分が笑いだけではなく、しっかりと伏線だったことにもドキリとしました。
葬儀ものは伊丹作品の「お葬式」以来、どうしても既視感を持ってしまうのですが、やはり面白いのです。
主演の高橋一生くんは、この役彼のためにあるな、というくらい瞬きさえもしっくりうまく演じていて、リリーさんはいつものありのまま感。
神野三鈴さんを母親に据えたのも説得力があり、事故からの腫れ上がった顔に化粧をして夜の仕事に出かけるシークエンスは強烈。
夫の去就に関する彼女の気持ちは説明もなく、画面から推し量るしかない、それが通用する女優さんです。
監督ご本人が演じた兄の役、少ない台詞と出番がこの物語の肝になっているように思え、一番残っています。
ほぼアドリブだという弔辞のくだり、完全に狙ってのことだと受けとって、あざとさも楽しみました。
取立て人の参列、これも実話なのかまた気になります。
ある意味豪華な脇のキャスティングは見どころとも言えるのですが、そこに残るひっかかりを排除した形でまた次の作品を観たいなと思うし、ポテンシャルこんなものではないなと信じられるので、次にも大きな期待をしてしまいます。

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ジル

Author:ジル
ジルです。
8年前から続けていた日記を引越し。
2011年からの記事をこちらに
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